社長のための就業規則講座

就業規則は会社のルールブック

就業規則は労働者保護の観点から義務づけられたように思われるかもしれませんが、逆の見方をすれば使用者(経営者)が職場規律の維持や労働者全体との労働契約を集中処理するものとして作られるべきものであると言えます。
個別労働紛争解決制度による民事上の相談内容(平成21年度)を見てみると、解雇(普通解雇、整理解雇、懲戒解雇)24.5%、労働条件の引き下げ13.5%、その他の労働条件15.1%などと、就業規則の記載関連事項が多くなっています。この中には就業規則の不備によって引き起こされた裁判も多くあるのではと思います。

就業規則を作成・届出すべき事業所

「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁に届け出なければならない。」(労働基準法第89条)とされています。
「常時10人以上」とは、常態として10人以上ということで、時には10人未満になる場合も含まれています。逆に、常態として10人未満の労働者であれば、時には10人以上となっても作成・届出の義務は発生しません。
「労働者」とは、その事業場に使用される全ての労働者をいい、正規従業員だけでなく臨時的・短期的な雇用形態の労働者はもちろん、他社へ派遣中の労働者も含まれます。

就業規則の絶対必要記載事項と相対必要記載事項

就業規則は、その企業の社員全員が守らなければ行けない規則ですからそれぞれの企業の特色があってよいのですが、法的には必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、その決まりがある場合は必ず記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)とがあります。
  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  2. 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
  4. 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  5. 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
  6. 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
  7. 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  8. 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  9. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  10. 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
  11. 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
1〜3が絶対的必要事項で、4〜11が相対的必要事項となります。