賃金に関する事項

賃金に関する事項

賃金に関しては、その決定方法、計算及び支払い方法、賃金の締め切り及び支払時期、昇給について就業規則に定めなくてはなりません。

賃金の構成

賃金の構成としては、基本給、諸手当、時間外労働割増賃金などがあります。定める場合の注意事項は以下の通りです。
  • 手当は定められているのなら明記しましょう。
    例:家族手当=配偶者(1万円)+子(1人につき5千円)あるいは通勤手当=25,000円を上限とし1ヶ月の定期代実費支給などです。
  • 割増賃金(時間外労働、深夜業、休日労働にかかる賃金)は計算式を明らかにしましょう。
    時間外労働とは、1日の労働時間が8時間を超える場合で、その超えた時間に対しては通常支払われる賃金に25%〜50%の範囲で割増された賃金を支払わなければなりません。
    同様に深夜業(原則午後10時〜翌午前5時)に対しても25%以上の割増された賃金を支払わなければなりません。休日労働に関しては35%以上となっています。

時間外労働が1か月60時間を超えた場合、その超えた時間については通常の労働賃金の5割以上の割増賃金を、また、超えた時間が深夜業に及ぶ場合は7割5分以上の割増賃金を支払わなくてはなりません(ただし、当分の間、中小事業主に関しては免除されます)。

では割増賃金の計算のもとになっている賃金とはどういうものでしょうか?基本給だけでなく諸手当も含まれますが、次の賃金は計算の基礎から除外します。
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、見舞金など)
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらのことをもとに次の計算式でいわゆる残業単価を算出します。 上式にて1時間当たりの賃金が算出されますので、その単価に時間外労働、深夜業は1.25、休日労働は1.35をかければ割増賃金が算出されます。
注意しなければいけないのは、1日のうちで時間外労働が深夜(午後10時以降)に及んだ場合は、午後10時以降の時間は25%+25%(=50%)の割増率となります。また、休日労働でしかも深夜業である場合は35%+25%(=60%)の割増率となります。

毎月何時間かの時間外労働がある場合、一定の金額を設定して最初から賃金に組み込むことがありますが、この定めをするときは何時間までの時間外労働かを明記しましょう。その設定時間を超える時間外労働をさせた場合は、当然超過時間分の割増賃金を支払う必要があります。

遅刻・欠勤の賃金取り扱い

基本的な考え方は「ノーワーク・ノーペイ」ですが、会社によっては欠勤日数分あるいは遅刻時間分の賃金を差し引かないところもあります。
ここでの注意点は、欠勤1日につき1万円差し引くとか、遅刻3回で欠勤1日とするなどの取り決めは無効となります。実際に仕事をしなかった時間分を差し引くようにしてください。

賃金の計算期間及び支払日

いわゆる締め日を決めます。例えば、月給制であれば「毎月末日」に締め切り、「翌月15日」に支払うというように、何月であっても確定されるようにします。
悪い例は、「毎月第4土曜日」に締め切り、「翌月第2月曜日」に支払うというものです。これは、月によって日が確定されませんからこういう設定をしてはいけません。

賃金の支払い方法

賃金の支払方法に関しては、「通貨払い」「直接払い」「全額払い」「毎月1回以上払い」「一定期日払い」の5原則が定められています。
ただし、法令や労働協約に定めがある場合、または労使協定を締結した場合は一部を賃金から控除できます。法令で控除が認められているのは、源泉所得税・地方税、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の労働者負担分です。
また、給与の銀行口座振り込みに関しては、労働者個別の同意が必要ですので、就業規則では「銀行口座振り込みにする」という記述はできません。同意書を作成し、個人別に保管するようにしてください。